「別に私は、あなたに家に帰ってきて欲しいなんて言わない。

あなたが私のことを他人と思うなら、あなたとは他人でかまわない。

私たちはもう、あなたの生活には関わろうなんて思わない。

でも……」


そう言った私の頭の中に、母の寂しげな顔が浮かんだ。


「もう、今回だけでいいんです。

私はもう、あなたに会いには来ません。

来年からは私も働けるから、今の私たちよりは、いい生活ができるはずだから……。

だから、今回だけでいいんです……」


真面目に生きていても、少しも幸せになれずにいる母に、お金を持って帰らなくては、母はまた悲しむ。


今日、ここで何があったかなんて、母に言わなければいい。


ただ私は、ほんの少しでも母をよろこばせたい。


お父さんが、私にお金をくれたよって……。