「小夜子、世の中には、きれいな水の中では生きられなくて、薄汚いどぶ水みたいなとこでしか生きられない人間がいるんだ。

正しいことが何かなんて、たいていの奴がわかってる。

でも俺は、ろくでなしだ。

自分だけが良ければ、それでいい」


私は、父のそんな話が聞きたいわけではなかった。


私が父に聞きたいのは、父が私たちにお金をくれるのか、ただそれだけだ。


「小夜子、俺たちには血の繋がりがある。

でも、俺たちはもう他人だ。

だから小夜子、俺を父親だと思うな」