そもそも母は、なぜあの日の夜中に、病院の屋上なんかに行ったのだろう。


あともう少し、あと半日だけ、母が私を待っていてくれたならば、私は、母を幸せにしてあげるつもりだったのに……。


夫の武士は、私にこう言った。


「お母さんが、事故死だなんて……。

今回の事故は、小夜子にとって本当につらいことだろうけど、悔やんでばかりもいられない。

お母さんだって、小夜子が泣いていたら、きっと悲しむ」


娘の百合子は、心に負った大きな傷のため、部屋に引きこもり、まともに話をすることすらできなかった。