「じつは今日、僕は街であの野沢恵子を見かけたんだ……」


武士の言葉に、私は、ハッとして顔を上げた。


十三年前に死んだはずの野沢恵子が、どうして武士さんのところに……。


「最初は、野沢恵子に似ている別人だと僕は思ったんだ。

彼女はもう死んでしまって、この世にはいない。

彼女が、僕の目の前に再び現れるなんてことはあり得ないことなんだ……。

でも……」


武士はそう言って、うなだれていた顔を上げた。


「僕には確信がある。

その女性は、僕の顔見て笑ったんだ。

かつての野沢恵子のように……」