山村武士が会社の駐車場に車を止めたとき、真っ暗な空が明るくなって、地響きするようなけたたましい音で、雷鳴が轟いた。


エンジンを切って、ワイパーが止まった車のフロントガラスに激しい雨が降りつけると、瞬く間に前方の視界はなくなり、武士は思わずため息をついた。


駐車場から会社のビルまで、およそ500メートル。


歩いてすぐの距離ではあったが、会社のビルに着くまで、傘を差してもびしょ濡れになることは、目に見えていた。


武士は後部座席に置いていた紺色の傘を手に取り、車のドアを勢いよく開けると、激しい雨が降る車の外に飛び出した。


武士は吹き飛ばされそうになりながらも、傘を差し、小走りで会社のビルへと向かった。