「私の娘、小夜子って言うんですけれども、私の体が弱いばっかりに、小さなときから苦労ばかりさせてしまって……」


絹子はそこで言葉を区切り、小さく息を吐いた。


「でもね、看護師さん。

私はあの子に何もしてあげられなかったんだけど、あの子は頑張り屋だから、自分の力で幸せになったですよ」


「そうなんですか。

それは素晴らしいですね」


「あの子、自分たちの家を買ったんです。

中古の小さな家なんですけれども……」


〈 お母さん、心に強く願えば、願いは叶うの? 〉


幼い日の小夜子の声が、絹子の頭の中で蘇った。


「私、そのことがとてもうれしくて、まるで夢のようで……」


絹子はそこまで言うと、言葉に詰まって下を向いた。