絹子は幸せな気持ちで歩き始め、三階の自分の病室まで階段を上っていこうとしたそのときに、後ろから明るい声で呼び止められた。


絹子がその声に振り向くと、上田と言う若い看護師が、笑顔ですぐ後ろに立っていた。


「寺田さん、こんなところにいらしたんだですか?

病室にいらっしゃらなかったから、どこに行ったのかなって思っていたんですよ」


「あら、そうだったんですか?

私ね、明日、退院なもので、いろいろ娘と話をしていたんですよ」


絹子はそう言って、若い看護師に笑顔を見せた。


「おめでとうございます。

明日は、娘さんと帰られるんですか?」


「ええ、そうなんです」


絹子はそう言って、上田に満面の笑みを見せた。