「はい、そうですが」


私は、低い声ではっきりとそう答えた。


「私、百合子ちゃんの担任教師をしている佐々木ですが、じつは……」


受話器から聞こえていた佐々木優子の声が、ふいに途切れ、私は漠然とした不安を感じながら、受話器を強く握った。


「先生、どうしたんです?

百合子に……、百合子に何かあったんですか?」


「じつはお母さん、四時間目の授業中に、百合子ちゃんが突然、取り乱して、授業中に教室を出ていってしまって……」


「百合子が、ですか?」


真面目で、おとなしい百合子が、なぜ?


私は、百合子の身に何かが起きたことを直感的に悟った。


「百合子ちゃん、その後、校舎の三階で倒れていたんです。

百合子ちゃんの身にそこで何があったのかは、私たちにもわからないのですが……」


私は、佐々木優子の話を聞きながら、固く目を閉じた。


「お母さん、今すぐ学校に来ていただけますか?

百合子ちゃんは、今、保健室で寝ていますので……」