「小夜子、本当にごめんね。

あなたも本当なら、他の子と同じように……」


「お母さん、昔のことはもういいの。

だって私は、今とっても幸せだから。

今の家には、ちゃんとお母さんの部屋もあるわ。

お母さんはその部屋を自由に使って、私たちと一緒に生活すればいいのよ。

もちろん、お金の心配もいらないの。

お母さんは、何か趣味でも持てばいいわ。

今までできなかったこと、犠牲にしてきたことが、きっとたくさんあるはずよ」


「小夜子……」


受話器の向こう側から聞こえてきた母の声は、震えていた。


「ありがとう。

私もとっても幸せな気持ちだよ。

今まで生きてきた中で一番幸せだよ。

私は小夜子に、何もしてあげられなかったのに……」