私は、十一年前の事件を思い出していた。


田所光江。


彼女は、誰かに溺死させられた。


私の頭を押さえつける力は恐ろしいほど強く、私は水の中でもがくばかりで、苦しくて苦しくて、自分の意識が遠いていくのがわかった。


早く空気を吸わなくては……。


そう思えば思うほど、肺の中の空気は外へと流れて行き、私は苦しさで体中を震わせた。


そして私は、肺の中の空気をすべて吐き出し、もう、私の頭を押さえる強い力に抵抗する気もなくなったとき、決まってベットから飛び起き、荒い息をして体中にべっとりとかいた汗を拭うのだった。