私の手には血のついた果物ナイフが握られ、目の前には、白いレインコートを赤く染めた立川早苗が倒れている。


倒れた彼女は悲鳴を上げ、ぬかるんだ土の上を這いつくばって、私から逃げようとしている。


逃がさないと、私は思った。


だって私は、この日が来るのをずっと待っていたのだから。


私が手を伸ばしても届かない幸せを、この子はあっさりと、何の苦労もなしに手に入れようとしているのだから。