私は、意識のない百合子をおぶって、激しい雨が降る公園を歩き出した。


少しでも早く、百合子を病院に連れていき、医者に診てもらいたい。


百合子にもしものことがあってはならない。


百合子は、私の夢と希望そのものだから……。


ざわめく木々の間を百合子をおぶって歩いているとき、後ろの方から女の笑い声が聞こえた気がして、私はゾッとして立ち止まった。


私は慌て振り返り、辺りを見まわしたが、そこには誰もおらず、暗く薄気味悪い公園があるだけだった。


〈 気のせいだったのかしら? 〉


私はそう思ったが、私の心臓はドキドキと大きな音を立てて鳴り止まない。


早くここから出ていこうと、私は思った。


私は、この場所に近寄ってはいけないのだ。


十五年前、立川早苗は、この公園で悲鳴を上げた。


雨が降る寒い夜だった。


私は、右手に果物ナイフを握りしめて……。