百合子の服は、水の中に浸していたかのようにびしょびしょに濡れていた。


百合子はこの場所に、どれくらいの時間いたのだろう。


私は百合子の肩を激しく揺すって、百合子に話しかけた。


「百合子!

大丈夫なの?

百合子!」


百合子は壊れてしまった操り人形のように脱力し、声すら出さない。


百合子は、完全に意識を失っていた。


「百合子、私よ。

お母さんよ。

お母さんが百合ちゃんを迎えにきたのよ」


ぐったりとした百合子の肩を私は抱きかかえ、百合子の上半身を起こした。


百合子の顔は泥にまみれ、ぐちゃぐちゃだった。


私は百合子の顔の泥を指で払い落とし、百合子の顔を見つめた。


百合子の顔は青白く、額には小さなすり傷があった。


私は体が冷えきっている百合子を抱きしめ、百合子がとりあえず無事であったことに安堵した。


悪霊は、百合子の顔を切り刻んではいなかったのだから……。