「おい、大ニュースだぜ!!聞いてくれよ!いいか、おい、数馬。こっち来いって。ヤバいぜ、マジ。いいか、聞いて驚くなよ。」

長い前振りを置いて、汗だくになってた涼が、低い声で言った。

「俺達の…デビューが決まったぁぁぁぁッ!!!」

誰も何も言わなかった。

正確には、言えなかったんだ。

ああそれはもう、あの日ほど、心臓が脈打った日は無かった。叫んで、笑って、叩き合って、あの日の四人で、拳をつきあわせたんだ。

「勿論まだまだマイナーだけどな!だけど!」

「こっからだろ!!」

涼の話を遮るようにして、数馬が乾杯のグラス…もといなっちゃんのオレンジ味を、天高く掲げた。

「楽しみね、色んな事が…!!」

蒼が、机の上のオーディション結果を、眩しそうに見た。

「歌おうよ!」

ベースをとった声が、狭い軽音学同好会の部室に響く。

10歳の、初々しい少年少女が、織りなす一生懸命な音。

それは初夏を彩るように、青い空に消えていった。