結果を言えば、バンドフェスタは大成功たった。

しかしそれは、当然とも言える。

吹上穂。

彼女のもつ天性は、不思議なものがある。

特別美人な訳でも、特別可愛い訳でもない。

特別優しい訳でもなければ、お金持ちでもない。

ただ屈託なく笑い、誰よりも歌う事が好きだった。

加えて斜め上を行くネーミングセンス。

そんな訳で、彼女にはごく自然と、その声の隠れファンもいたし、

今日の観客もずば抜けて多かった。

「穂ちゃん。」

未だ興奮が冷めない舞台裏で、町長が寄ってくる。

「今日もお疲れ様。やっぱり、歌が大好きなんやのう。」

「うん!!!」

ピッチの狂ったギターを直す、あの鼻にくる音が響く舞台裏。

「まだ中学生やけ、まだまだ歌いや。

みーんな、穂ちゃんの歌うん待ってるで。」

「ありがとう!また誘って下さい。」

満面の笑みを向けられた町長は、にゃっと笑って帽子を被り直した。