ジャジャジャジャーン


秋の昼空は乾き、トンボが夥しく遊んでいる。

午後から強くなってきた風は、温もりを部屋に忘れてきたように、体に刺さる。

「さっぶ…。」

時は、バンドフェスタ当日。出場番号12番の”逆走シンデレラ”は、控えテントで出番を待っていた。

「しっかし先輩、なんすかそれ。」

綾香の目線の先は、上橋さんが持っている、一枚の写真に注がれている。

「お通夜じゃないんだから…。亡くなったみたいですよ。」

「なっんだよっ!!別に、いいだろ!」

ムキになって、それを握りしめると、さあー、そろそろだと言いながら、袖を覗きに行った。

「ね、やっぱりだったね。」

「しーっw

そっとしておこうよ」

穂と綾香の会話を聞いてか聞かずか、こっちに戻ってくる上橋さん。

「次、来るぞ。

相変わらずの凄い人。」

はい、と返事をして、コートを脱いだ。

3人おそろいの、香奈さんデザインのピンクTシャツが、露わになる。

「うわー、楽しみだなっ!!」

スティックを握りしめ、綾香が足を鳴らす。

そう、楽しみ。

いつだって、ステージは私の、絶景スポットだ。

笑いが抑えきれず、すうっと息を吸った。

「じゃあ、最後の公演です。

香奈さんの文まで、頑張ってきましょう!!!!」

克を入れて、ステージに進む穂。

え、俺のセリフは?という上橋さんの台詞なと、お構いなしだった。