うんうん、と頷きながら言う刈谷くんに、最初は意味がわからないといった様子だった日下部くんも、遅れて意味を理解したのか突然顔を真っ赤に染めた。



「っ、」



そして、チラリと横目で私を見ると罰が悪そうに眉根を寄せて。



「わ、悪かったな、変なこと聞いて」


「へ?あ、いや、あの、私……そ、そういうんじゃなくてホントは……」


「り、理由はわかったし、敢えて言わなくていいからっ。それに、そういう理由だったら、あんま無理すんなよ……っ」


「え?お、おーい、陽!!……ったく、」



バタバタと、顔を赤くしたまま足早に教室を出て行ってしまった日下部くんの後ろを、刈谷くんも「じゃあ、また後でね」なんて言いながら忙しなく追い掛けた。


残された私とミドリは、その後ろ姿を見送りながら少しの間呆然としているしかなくて。


結局、水泳の授業に出掛ける女の子たちの焦ったような声を聞くまで、なんとなくそこから動けずにいた。