2つ下の夢はギャルじゃなくて、中学の時から陸上部で、短距離走の全国にも出てる有名な選手らしい。
そんな夢も今日から同じ高校。
和也は一樹と同じの野球部。
一樹は小学生のときからピッチャーで怪物級と言われてた。
パパもたっちゃん(一樹のパパ)も一樹はすごいって言ってた。
和也は一樹と比べられて大変そうだなって思ってたけど、嫌な顔一つしないで兄貴はすごいって尊敬してる。
ちなみにあたしも野球やってた。
小学生のときだけど。
甲子園行けないこと知って泣いてやめたんだっけなあ。
そのときもタッチなら
”俺が甲子園連れてく”
とか言うのかもしれないけど
そんなことは一切なく、泣いてたあたしを大笑いしてた。
一樹とは小学校も中学も高校も同じでクラスでなぜか同じ。
いわゆる腐れ縁ってやつ。
高校生活最後くらいは一樹と離れたいなあ。
バイトは、美優と居酒屋やってる。
そんなあたしの毎日は普通に楽しいし、恋愛はパパみたいな恋愛をしたい。
この人だって思えるような人と付き合いたい。
そんなあたしの生活だ。
そして今日は、高校3年生になってクラス替え。
朝起きて、お気に入りのブレザーの制服を着て、メイクして、ピアスをつけて階段を降りてリビングに行くともう夢の姿はなくてママがご飯を食べてた。
「ママ、おっはー!あー。腹減った〜」
「おっはー!夢もう行っちゃったわよ〜?あ、帰りは〜?」
「バイト〜」
「変な人に絡まれないようにね?今日からパパも瑠衣も夢も同じ学校なんて、ママも通いたくなっちゃーう!」
「パパと同じでも学校では体育以外喋んないし、夢も3年と1年なんだからあんま関わんないよ」
「えー…ま!一樹とまた同じクラスだといいわね〜」
「まだ決まってないから!」
「一樹と瑠衣が同じクラスだと楽なのよ〜保護者会もほら、ママ忘れちゃうじゃない?でも真美ちゃんからメールしてくれるんだもの」
「それ、ママの都合じゃん。じゃあいってくるわ〜」
「いってらっしゃーい」
玄関を出ると、暖かい日差しがあたしを照らしてた。
「うーっし!今日も1日元気にいくかー!」
ガチャ
あたしが気合いを入れて、伸びをしているときに隣のお家のドアが開いて真美さんがお弁当箱を持って出てきた。
「あ、瑠衣おはよう」
「真美さん、おっはー!それどしたの?」
「それが、一樹と和也、お弁当忘れちゃって〜…」
うわ、この流れ。
嫌な予感するよ。
「瑠衣、渡してくれない?お願い!」
ほらきた。
「真美さん、あたし、暇じゃないんだよ。うん。」
「えー!じゃあ渡してくれたら…バイト代あげちゃう!!」
「え、まじ?」
「おおまじよ!きちんとバイト代出すし、ケーキも作ってあげちゃう!!」
それは、乗るしかない。
「その約束覚えておいてね?任せろい!」
真美さんから2つのわりと大きいお弁当箱を受け取ると真美さんがにっこりした。
「よろしくね、いってらっしゃい」
「いってきー!」
真美さんは朝が苦手みたいで、2人の朝練の時間に間に合わなくてお弁当を渡しそびれちゃう。
そのたんびにあたしが2人に届けるんだけど、朝練終わった野球部がいる部室に届けんのは案外勇気がいって。
最初のときは、あたしが作ってんのかと野球部員に疑われた。
今じゃ、旦那はどっちにするんだとか言われてからかわれるから正直いって行きたくない。
でも、真美さんの作ってくれるケーキはめっちゃうまい!!
それにバイト代まで出るならやるしかない。
いつも通り、ポケットに入ってるiPodのイヤホンをつけて音楽を聴いて、電車で5つ先の駅まで電車に乗る。
あたしにはいつも定位置というものがあって、1番端の席に座る。
そして、あたしの席の前にはいつもその人の定位置の他校の野球部がいる。
坊主でエナメルバッグに焼けた肌。
少し童顔で、いつも寝ている。
あたしが乗る前から乗っていて、あたしよりもあとに降りる。
その人を見るのが日課だったりする。
電車を降りると歩いて10分くらいのところにあるのがあたしの通ってる南西高校。
南?西?どっち?って思ったこともあったけど、案外嫌いじゃない。
学校にもうすぐ着くというとき、背中にバッグが当たった。
「おっはよーん!!」
「痛いなあ、もう少し優しくしてよ」
「ごめんごめん、低血糖だなあ、朝は瑠衣ちん不機嫌〜」
「美優が、元気すぎんの」
「てか、なにそのお弁当箱2個」
「真美さんに頼まれた」
「あちゃー、今日も野球部にバカにされるよ(笑)」
「そーだよ、最悪だよ」
美優はテンションがいつでも高い。
いつもニコニコしてる。
それに性格もいい。
2人でいるとあたしのほうが気が強い。
あたしよりも一歩後ろを歩くような古き良き時代の女ってやつ?
だから男にはモテる。
本人は、本命がいるからそんなの相手してないんだけどね。
2人でお喋りして、校門まで行くと
「うっわ!生徒指導の先生じゃん」
「あー、ほんとだー。怒られちゃう」
「裏口からいこ」
「美優いいや〜、裏口行ったら野球部の部室目の前であたしまでからかわれるのごめんだし〜?(笑)」
「裏切るのか?お?」
「クラス分け見とくから〜」
それだけいうと、そそくさとクラス分けの紙が貼られてる中庭に向かって歩いて行った。
「いくか〜…」
裏口着いて、開けてもそこにはだれもいなかった。
「あれ?」
時間を確かめると終わる時間までまだあった。
「うーん。暇だし、見に行くか!」
あたしはグラウンドに着いて、日陰の水道の前に座って、野球部を見た。
野球部は朝練をしてて
パパと一樹と和也がいた。
パパも、一樹も和也も部員全員が集中して、かっこよく見えた。
あたしも見入って夢中になってた。
そして、いきなりあたしの頬に冷たいなにかが当たった。
「ひゃあ!!」
横を見ると
「一樹。」
一樹が汗だくなまま立って、ペットボトルをあたしの頬に当ててた。
「お前、夢中になりすぎ。春だとしてももう暑いんだぞ。熱中症にでもなられたら困るんだよ」
そう言って、一樹はペットボトルをあたしに差し出した。
「うるさいなあ。別に一樹見てたわけじゃないし!!」
フンっとペットボトルを乱暴に受け取って、ごくごく飲んだ。
「いや、俺だろ?」
「ごめん、全く見てない。」
「なんだよ、素直じゃねーの」
「べーっだ!!」
あたしは思いっきり舌を出して、睨んだ。
「お前、俺に用あんじゃねーの?」
「あ!お弁当!真美さんに頼まれた!はい」
バッグの中からお弁当を一つ取り出して一樹に差し出すと、不服そうな顔をした。
「ん?なに?早く受け取ってよ、あたしクラス分け見なきゃいけないんだから」
「お前って本当色気ねーよな」
そういうと、乱暴にあたしからお弁当を取った。
「あん?あたしだってね、おっぱいも出てるし、お色気ムンムンだっつーの!」
「今日の夜、俺らの家来いよ」
「は?なんでよ、あたし今日バイトなんだけど」
「お前がみたいって言ってた映画、ダチに借りたんだよ」
「え!みるみるみます」
「じゃあ来いよ」
「あいあいさー」
そして、あたしは敬礼をして急いで中庭に向かった。
「あ!和也のまだ渡してなかった〜。まあ、あとで教室行けばいいか」
ダッシュで中庭に向かうと、美優があたしに気付いて大声で呼んできた。
「るーい!!同じー!!」
はあ、良かった。
駆け寄ると、美優が満面の笑顔でピースをしてきた。
それより!!
「あ、アイツは?」
「アイツ?」
「一樹だよ一樹!!」
「それは、自分で見て来なさい!」
ドンッと背中を押されて、張り出されてる紙を見ると
3年C組
相川一樹 木村瑠衣
「え…」
これって。
これって。
「さいっあく!!!」
うーわ。
しかも、名前順隣?
おかしくない?
木村の前なんでいないの?
毎年同じクラスだったけど、名前順隣は初めて。
木村と相川だからいつも近かったけど、並ぶのは初めて。
「最悪すぎでしょ」
「瑠衣、見た〜?」
「うん、最悪」
「まあー、これも運命なんだよ。12年目。楽しんでこ。」
「はあー…」
なぜ、こんなにも嫌なのか。
それは昔からあることが起こるからだ。
小学生、中学生、高校2年生まで、
あたしは一樹に勝ったことがない。
勉強もいつも学年1位に一樹はいる。
あたしはめっちゃ頑張っても5.6位。
運動神経は一樹は抜群。
あたしは、女子の中では短距離も長距離も1位だけど、タイムでは一樹にぼろ負け。
それで小学生のときに1度、負けたときにあたしが一樹に言った言葉がある。
”男と女違うもん!”
そしたら一樹は
”負け犬の遠吠えだな”
そう言って嘲笑った。
それから負けるたんびにクラスでバカにされ、笑われて。
だから、高校生活最後くらい穏やかに過ごしたかったーーっ!!
そんなあたしの願いも届かず。
そのまま美優と教室までいくと、
すでに人がたくさんいて、あたしの席を確認して座ると、目の前にでかい背中があった。
「よう、さっきぶり」
「あんたの背中で黒板見えないんですけど」
「連れねーなあ、12年目だってのに」
「いやだよ、あんたと12年も一緒なんて」
ため息をつくと、教室に先生が入ってきて驚愕した。
「パパ…」
さすがの一樹もびっくりしたのか、口が開いたままになってた。
「まじかよ…」
「えーっと、今年のこのクラスの担任になりました。木村宗一です。まあ、楽しくいくか!」
クラスは大盛り上がりだったけど、あたしの心は最悪で。
神様、今年のあたしには試練を与えるのですか?
あたしは、とても耐えられると思えません。
「きゃー!!もう最高!!」
いま、家のリビングですごく騒いでいるのは、ママ。
バイトを終えて帰って、お風呂の後、家族4人で、夜ご飯を食べているときに
パパがママに担任になったことと、一樹と同じクラスのこと、美優も同じなことを全部はなしたあとの第一声だ。
「えー、なにそれなにそれ、んもう最高じゃない!毎日楽しそうねえ〜」
ママはパパに興奮状態で話してて
「そうなんだよ、パパもびっくりしたんだよ。さすがに親子で担任と生徒はね」
「そうよ〜、どうして?」
「校長が、親を担任にすれば少しは真面目になるだろうって」
「なにそれ〜。瑠衣は真面目よ〜?成績いいし〜!」
「そうだよなあ!俺は、瑠衣を誇りに思ってるぞ!」
「はあ〜…本当にびっくりしたんだから」
「パパもびっくりだ!!わはははは」
「お姉ちゃんいいなあ!パパが担任とかめっちゃいいじゃん!面談とか緊張しなくていいし」
「いや、そうだけどさあ…」
「あ、わかったお姉ちゃん、かずにいと同じなのが嫌なんでしょ!!」
「いいじゃなーい!仲良しさんで!」
「はいはい」
あたし以外すごく盛り上がってたから、ご飯をすぐ食べ終えて、あたしたちの家に行った。
ドアを開けると、一樹と和也がいて、一樹はベッドに寝そべって雑誌を見ていて、和也は勉強していた。
「よう、ブス」
「うるさいなあ」
「瑠衣ねえ、なんか不機嫌?(笑)」
「そんなことないよ、ごめん、勉強中なら帰るね」
「いいよ、俺もう終わるし、それに風呂入りに戻るからさ」
「そっか」
「じゃあ、また明日ね」
「おや〜」
和也が出て行くと、一樹と二人っきりになってあたしは自分の机に座って、大学資料を見てた。
ふたりの間には会話はない。
沈黙を破ったのは一樹だった。
「なあ」
「ん?」
あたしは一樹の方を向かずに返事をした。
「お前さあ、すっぴんの方がいいよ」
「は?」
あたしは、振り向くと、雑誌を読んだままで。
「だから、濃いメイクしてるよりもいまのすっぴんの方がいいっつってんの」
「バカにしてんの?(笑)」
「さあな」
「なんなのよもう」
「お前さー、スキなやついんの?」
「いないよ」
「だろうな。お前と付き合うとか、やべーやつだよな(笑)」
「あたし、一樹みたいな人はぜったいムリ!もっと優しくて、紳士な人がいいもん」
「は?俺、紳士だし。」
「どこが?」
「俺、告られるし」
「知ってる。みんな頭おかしいのかと思う」
「付き合わねーけど」
「なんで?」
「俺、野球しか興味ねーもん」
「まあ、そっか。一樹らしいや」
「お前は、なんで彼氏つくんねーの?」
「うーん。あたしさあ、運命信じてんだよね」
「はあ?バカなんじゃねーの?(笑)」
「バカってなによ!女なんだから運命くらい信じてもいいじゃない」
「じゃあ、どんな運命の出会いがいいわけ?」
一樹は雑誌を置いて、あたしの前まで笑いながら来た。
「んー…パパが野球やってるっていうのもあるし、やっぱ球児とかかっこいいじゃん?だからー、優勝して1番にあたしのところに来て”瑠衣が俺を強くしてくれた”とか言って、抱きしめてほしーい!」
あたしは、テンションが上がって枕を抱きしめた。
「ぶっ。ぶはははは!!!」
「そんな笑うことないじゃん!」
「わりいわりい、あまりにもバカすぎて(笑)それ、高校球児じゃなきゃだめだろ?しかも、もうあと2ヶ月ねーじゃん(笑)その間に運命の相手見つけられんのかよ(笑)」
「あ、た、たしかに。」
「お前が彼氏できる日は一生ねーな!(笑)」
「いーよ、いーよ絶対作るから!!」
「むーり」
「うるさい、うるさい、かっこいー彼氏作るから!!」
ふんっと言って自分のベッドに潜り込んで一樹も自分のベッドに寝たみたいであたしはそのまま寝た。
次の朝のあたしは…
憂鬱。
なぜかというと、彼氏作るってどうやってするわけ?
作ったことないんだよ?
「あーっ!!」
いてもたってもいられなくて、いつもよりすごく早く起きて、家を出た。
電車に乗ると、あの人がいた。
「あれ?」
いつも見る、他校の野球部。
今日は早いんだ…
その人の定位置にはすでに座られていて
いつもの定位置にあたしも座ろうとしたらおばあさんが立ってたから
「おばあちゃん、座って!」
「いいのかい?お嬢ちゃんも座りたいだろう?」
「いいに決まってんじゃん!!あたしはほら、ピチピチの18だから足腰強いんじゃ!!」
あたしは、おばあちゃんを座らせて、マッチョポーズをしてみせた。
「ありがとうねえ」
「いいんだよいいんだよ。おばあちゃんには元気でいてほしいしね」
そんなおばあちゃんとの会話を頼んでると、後ろから微かな笑い声が聞こえた。
「くっくっ…」
「え?」
後ろを振り返ると、あの野球部が口を押さえて笑ってた。
「え?あたしのこと笑ってんの?」
「ごめ、くっくっごめん」
「なにが、面白かった?え?なんかした?」
「いやだって、早朝にそんな元気にしかもマッチョポーズを金髪のギャルが電車でおばあちゃんに席譲るとか笑えてきてさ」
「失礼な!あたし、ギャルだけど心は優しいんだから見た目で判断しないでよね、全く。」
「わりいわりい俺、あんたのこと知ってんだよね」
「あたしも知ってるよ?いつも電車同じじゃん、あんたいつもぐーすか寝てんじゃん」
「よく見てんな(笑)俺もあんたのこと気づいてたよいっつも金髪ギャルが俺の前に座ってんなーって」
「あたし、金髪だし、ギャルだけどヤンキーじゃないしグれてないから。そこんとこよろしく」
「うん、さっきの行動見たらそう思った。名前は?俺、高山幸希 桜ヶ丘学園の3年。」
「あたし、木村瑠衣。南西高校の3年」
「よろしくね、瑠衣ちゃん」
「よろよろ〜。てか、桜ヶ丘学園って野球めっちゃ強いっしょ」
「あ、知ってる?」
「うん、知ってる甲子園の回数ハンパないじゃん」
「おお、知ってんな。」
「だって、あたしのパパあたしの高校の監督だし、幼なじみも野球部だから」
「そうなんだ。南西高校今年評判いいからライバルだね」
そう言って、にっこり笑う幸希は可愛かった。
てか…
「でかくね?」
「ん?俺?」
「いや、それしかいないっしょ」
「俺一応185あるから。瑠衣ちゃんは小さいでしょ」
「うるさい!あたしだって160じゃ!」
「小さいじゃん(笑)」
「なにを〜?あ「まもなく〜南西高校前〜閉まるドアにご注意ください」」
「じゃあ、あたし降りるわ!!じゃーなー!」
「バイバイ瑠衣ちゃん」
こ、これは!!
運命の出会い?
きゃー!!
あたしはルンルン気分で
まだ誰もいない教室に入って、ベランダに出るとグラウンドで野球部が朝練を始めようとしていた。
一樹が投げていた。
あ、一樹。
あいつ、あんなに背大きかったっけ?
幸希くんより少し小さいくらいだと思うから180くらい?
いつからあんなに体つきもよくなった?
筋肉でしまってて、練習着で朝練する姿はかっこよくて。
「ふーん。案外あいつもかっこいいじゃん?」
それから、放課後の掃除でじゃんけんで負けてゴミを捨てにごみ捨て場に向かって裏口に着いたとき、誰かの声が聞こえた。
「あのね、」
だれかいる?これはもしや、もしやのもしや?
告白場面?
うっひょー!
見たい気もするけどなあ。
でも、行かなきゃだし。
これは覗き見じゃない。うん。
木に隠れて声のする方を覗いてみると、
え?
一樹じゃん。
相手は…
隣のクラスの莉子ちゃんだ。
美少女で有名なんだよね。
背も小さくて、目もクリクリだしあーゆー子がモテるんだろうなって感じ?
一樹、あんな子に告白されるなんて。
一樹のどこがいんだかさっぱり。
「あのね、あたし…好きなの。一樹くんのことが」
言ったー!!
やばいやばいやばい。
あたしの方が緊張だよ〜
一樹はどうすんだ?
一樹は莉子ちゃんに申し訳なさそうな顔をして
「あー…俺さ、好きなやついんだよ」
え?
あいつ、好きな女の子いんの?
あたしに嘘ついてたの?
なんて奴だよ、馬鹿野郎。
「それって、瑠衣ちゃん?」
おいおい、莉子ちゃん、それはないよ?
その時、後ろから大声が聞こえた。
「瑠衣ー!!」
うっわ。最悪。
後ろから、美優がダッシュで走ってきた。
それと同時に一樹と莉子ちゃんにもあたしの存在がバッチリ見られたわけで。
美優以外のその場にいる全員が気まずい空気が流れた。
「瑠衣なにしてんの〜?」
「ちょっ、バカ!」
「おい」
この声、怒ってる時に出る声じゃん。
すんごい低い声があたしに向けられた。
恐る恐る振り返ると、眉間にしわ寄せた一樹があたしの真上にいた。
「お前なにしてんだよ」
「べ、別に覗いてたわけじゃないから!ゴミ捨てたかったのにここでそもそもコソコソしてんのが悪くない?」
一樹に負けじと言い返した。
「いや、お前さあ、いんなら言えよ」
「言えるわけなくない?バカなんじゃないの?」
「お前よりバカじゃねーよ」
あたしと一樹が言い合いをしてた時、
「あのさ〜…なにしてんのあんたら。莉子ちゃん、どうすりゃいいかわかんないじゃん」
「「あ」」
「わりい」
「あ、ううんもういいの。わかった気がするから」
そう言ってあたしに笑いかけた莉子ちゃん。
「わりいな。さんきゅな。」
「あたしこと、聞いてくれてありがとう」
「おう」
莉子ちゃんはそれだけ言って、帰って行った。
「お前さあ、話し聞いてた?」
「ううん、ぜーんぜん聞いてない」
「えー、なに〜?美優にも聞かせてよ〜」
「美優には関係ねーよ」
「んまあ、いーよ、いこ美優!ばいばーい一樹」
あたしは、莉子ちゃんの告白を言いふらさないと決めた。
あたしも自分から告白できるくらいの恋したいなあ。
あたしは、放課後美優と遊んで10時超えてて、子供部屋にそのまま帰った。
ガチャ
「あー、つかれたー」
言いながら部屋に入ると、和也がいた。
「おー、瑠衣ねえおかえり」
「ただいま〜つかれたー」
あたしはそのままベッドにダイブした
「あれ?一樹は?」
あたしが言うと、和也はなんだか気まずそうに頭をかきながらあたしに聞いてきた。
「瑠衣ねえ、なんかした?兄貴今日すんげえ、機嫌悪くてさあ。部活始まってからも俺に八つ当たりたくさんしてきて大変だったんだよ」
おっと。
え、なんかしたっけ?
「うーん…」
「心当たりない?」
えー?
まじでなんかしたっけ?
「わかんないや〜…」