(蓮は直ぐに調子にのるからなぁ)
そんな事を思い苦笑いをした時、アップ終了のホイッスルが鳴り響いた。

「しっかし、ギャラリー多いよなぁしかも女子ばっか」
ベンチに戻りドリンクを飲みながら蓮は周囲を見渡した。
「しかも可愛いし」
「おい、知らねーぞ」
「見てるだけは罪っすか?」
(オヤジかよ…)
キョロキョロする蓮を呆れ顔で宙は見つめ返した。
「お前、そういう事言ってると」
「宙君、お疲れ様」
タオルを俺に差し出しながら満面の笑みをした真衣ちゃんがいつの間にか前に居た。
「サンキュー」
「あれ?俺のは?」
「第一東校の女子に借りたら」
「えっ?…えぇ?」
「はい、どーぞ」
真衣ちゃんは冷めた視線を向け蓮だけをはぶりながら笑顔でメンバーにタオルを渡して回る。
彼女はマネージャーであり、蓮の彼女でもある。
半年前から二人は付き合い始めていた。

「ねっ俺も俺も!」
「15分後に第一東校と対戦するから今の内に水分補給しっかりしてね」
「真衣ちゃん〜」
蓮は必死に彼女の後を付いて回っていた。

「参ったわぁ」
大袈裟に呟くと蓮は隣に座った。
どうにかタオルは無事貰えた様だ。
「自業自得」
「見てただけよ?」
「目つきがいやらしんじゃねーの」
「んな事無いし!真衣ちゃんにはいやらしいかもだけど他の女子には無い」

(こいつ…アホだわ)
男らしくキッパリと言い切る蓮の横顔を見ながら心からそう思った。