「そのチョコ、ちゃんと食べろよ。パッケージだけでなく味も絶品だ」
「え……。う、うん」
見上げると、苦笑している翔平君と目が合った。
私をからかうような、それでいて嬉しそうな表情を向けられると、昔の翔平君の笑顔を思い出す。
いつも柔らかな愛情で包んでくれた、あの頃の翔平君の面影を今も探している。
「パッケージ、気に入ったか?」
探るような声を聞いて、ふと我に返る。
もしかしたら、ううん、きっと翔平くんは私がこのチョコを買った理由に気づいている。
もちろん、チョコが大好きで、気になる新製品だからこそ買ったけれど、理由はそれだけじゃない。
この新商品たちには、特別な意味がある。
新製品だけでなく、濃厚な甘さにほれ込んでいるもうひとつのチョコにも同じ意味があるのだ。
翔平君はそれに気づいているに違いない。
袋の中に無造作に放り込まれたチョコたちを覗き込み、複雑な想いでいると。
「で、今はどこに住んでるんだ? 最近引っ越したって聞いたけど?」
どう聞いても機嫌がいいとは言えない低い声に我に返り、身をすくませた。
「このコンビニで会うってことはこの近くなんだろ? 送るからどこか教えろ」
「えっと、すごく近いし、別にひとりでも平気。気を遣わなくてもいいよ」
「四の五の言わずに教えろ。こんな深夜に女のひとり歩きなんて、襲ってくださいって言ってるようなもんだろ」
翔平くんの荒々しい声にぴくりと体を揺らす。