翔平君はそれが気にならないのか、私の肩を再び抱き寄せてくすりと笑った。
「じゃ、萌の家に一緒に帰って、テイクアウトしたオムライスを食べようか。どうして一緒に帰るのかと言われれば、今日から俺は萌と一緒に暮らすから」
翔平君の言葉を頭で何度も繰り返す。
「一緒……? え? 暮らすって、どういう……」
軽い足取りで駅に向かう翔平君に引きずられるように歩きながら、私は何度も気の抜けた言葉を繰り返した。
翔平君は私の問いかけに答えることもなく、嬉しそうに口元を上げて歩き続ける。
さらに近くに肩を抱き寄せられ、出会って以来初めてかもしれない密すぎる距離感に言葉を失ってしまう。
そっと見上げれば、ずっと想い焦がれていた人の横顔があり、ふたりの体温が重なり合っている
まるで恋人同士のような甘い触れあいが嬉しくて眩暈すら覚える。
彼はもうすぐ私じゃない女性と結婚するというのに。
そして、結婚相手に違いない三崎紗和さんに申し訳ないと思いながらも、今この瞬間がいつまでも続けばいいと、思わずにはいられなかった。