高校生の頃までは兄さんほどではないにしても私が喜ぶような言葉をくれることも多かったけれど、成長するにつれて保護者のように厳しさが混じった言葉をかけられることが増えた。

この間深夜のコンビニで会ったときにも不機嫌な顔で文句ばかりを言われたし。

体を寄せ合うような近い距離にも慣れていないし、溶けてしまうような甘い口調もどう答えていいのかわからない。

今私はどうすることが正解なのかわからなくて、何度も口をぱくぱくさせている。

おまけに翔平君の手が肩に回されて、押し出されるように歩き出した。

「しょ、翔平君、どうして、あの」

こころもとない足取りで翔平君と歩いても、どこに向かっているのかもわからないし、こうしてふたりでいること自体おかしい。

「翔平君、どこに行くの?」

「ん? こんなに綺麗にしてもらった萌を見せびらかしながら食事でもしたいところだけど、今日はこのまま帰ろうか」

「見せびらかし……? 帰るってどこに?」

楽しげに話す翔平君を見ると、私を見つめる視線とぶつかった。

私とこうして会ったことに驚いているわけでもなさそうだし、髪形を変えたり丁寧なメイクをほどこしてもらったこともなんとも思ってないようだし。

「アマザンで」と迷いなく言っていた気もする。

今日、エステでアマザンに行くことを兄さんから聞いていたのだろうか。

それに、今ここで会ったのが偶然ではないような気がして戸惑ってしまう。

髪形も変えて、きっちりとしたメイクもしている私を見て、これから私に用事があるとは思わないのだろうか。

ひと言くらい、何か聞いて欲しいけれど。

私が混乱していることは顔にも表れているはずなのに、翔平君は意地悪だとも思える笑顔を見せるだけだ。

「萌が好きなオムライスをテイクアウトしようか」

「あの、翔平君?」

「それともカツサンドがうまい店を事務所の女の子に教えてもらったんだけど」

「翔平君、オムライスでもカツサンドでもどっちでもいいけど、どうして一緒に帰るの? それに、どこに?」

いつまで経ってもはっきりしたことを言ってくれない翔平君に焦れて、思わず大声をあげた。

すれ違う人たちがちらりちらりと振り返り、恥ずかしくなる。