私が働いている「別府デザイン事務所」の所長であり、就職活動に迷いを感じていた私を採用してくれた恩人でもある。

世間が注目するような大きな仕事ばかりをするわけではないけれど、引き受けた仕事は確実に、ううん、依頼以上の仕上がりで納品する、知る人ぞ知る有名デザイナーだ。

今回私も参加させてもらった飲料水のラベルの仕事も別府さんの実績がモノを言って手に入れた仕事らしいし、奥の深い人だと思う。

けれど、普段の別府所長にはそんな気負いも何もなく、絵を描くことが大好きな紳士だ。

実力があるのはこの五年で理解したけれど、大きな仕事だけでなく、それほどのお金にはならない仕事だって興味があれば積極的に受けている。

先月納品した、雑貨屋さんの包装紙のデザインはとても評判がよく、雑貨屋さんの近所の書店からもブックカバーのデザインの依頼を受けた。

私も別府所長のサポートとして携わったせいか、書店からの依頼を聞いたときには飛び上がるほど嬉しかった。

ひとつひとつの仕事をしっかりと仕上げれば次につながるということを実感し、地道にのんびりと仕事を楽しむその姿に私は大きな影響を受けている。

就職活動中はデザインよりも自動販売機の設計をしたかったというのに、出会いの不思議か自分の気持ちの変化か。

別府所長のように周囲から信頼されるデザイナーになりたいと思うようになった。

翔平君のように世間からの注目を浴びるような大きな仕事を任されるのもすごいと思うけれど、私は別府所長のような、小さな仕事を気持ちを込めて進めることができるデザイナーになりたいと思っている。

そんな別府所長と翔平君の接点を考えていると、翔平君が言葉を続けた。