瀬那はカバンを肩からおろしながらその影を見つめた。

影はくるって勢いよく振り返ると瀬那の方に向かって叫んだ。

「なんでよけるのーっ!?」

「いや、なんでって…」

瀬那は思わず苦笑いをする。


「もーっ」などと言いながら腰に手を当てるのは、佐々木由亜(ササキユア)。

瀬那といちばん仲がいい友達だ。


「あっ、そういえば今日から新体制じゃん?」

先程のことなど無かったように由亜がいう。

その勢いに瀬那はよくついていけなくなる。

「あ、あぁ…うん、そうだね」

瀬那がそう言うと共に、音楽室の扉が勢いよく開いた。

「ではっミーティング始めるよっ!」

やたら張り切って入ってきたのは新部長の長岡美郷(ナガオカミサト)。

「おー」「きたきた」などと言いながら部員は席についた。

「えーっと、私がっ、新部長の、長岡ですっ。って、知ってるか…。まあ、今日から頑張りましょう!」


美郷の癖である、文節ごとに切るしゃべり方。

いつもと変わらぬ雰囲気に、瀬那は心なしか安心する。