「…莉茉…。」
唇から離れ首筋に暁によって落とされる口付け。
時々、ちくりと淡い痛みが走るのは、赤い花を散らされているからで…。
「…あ、あ…。」
甘い吐息が私の口から流れる。
もう、
………抵抗が出来ない。
「……暁。」
ーーー狡い。
私ばっかりが、こんなにも乱されるんだから……。
観念して暁の首の後ろに腕を回して絡ませた私は、このまま行為を受け入れようとした、
……その瞬間。
―――ピンポーン。
インターフォンの音が、寝室まで響き渡る。
「……。」
「……チッ。」
固まる私に、不機嫌な暁が盛大な舌打ちをした。
「莉茉。」
「…う、ん?」
ぎこちなく暁から手を離せば、その瞳が細められる。
「直ぐに追い返してくる。」
「…えっ!?」
追い返しちゃうの…?
……お客様なんじゃ…。
困惑しながら、暁を見上げる。
「このまま待ってろ。」
「……、」
私の額に口付けた暁が、さっと寝室を出ていくのを唖然としながら見送った。
「…………これで暁の機嫌が悪くなるんだろうな…。」
溜め息を1つ吐き出して、インターフォンを押す。
莉茉ちゃんとの時間を奪いたくは無いけれど、此ばかりは仕方がない。
「……俺、殺されるんじゃないか?」
ふと、最悪な展開を思い浮かべてみる。
もし、
………莉茉ちゃんと暁が良い感じになってたら…。
「……。」
たらりと、背中に変な汗が流れ落ちた。
…………確実に俺って2人のお邪魔だよね!?
あれこれ想像していたら、目の前のドアが開かれる。
「……ひいっ。」
ドアを開けた暁に、俺の顔が真っ青になった。
………超、不機嫌なんですけどっ!?
「っ、若お疲れ様です。」
「……何の用だ?」
引き攣った笑みで頭を下げれば、露骨に不機嫌な暁が俺に冷たい視線を向ける。
「あの、いい加減に仕事に出てもらえませんかね…?」
「……。」
黙り込む暁。
……やっぱり、不機嫌にもなるよね…。
……でも……
暁の仕事がたんまりと溜まってるんだよ…。
このまま、莉茉ちゃんと部屋に籠られるのは実直、痛い。
「…休みは、昨日の1日だけの筈ですよね?」
「……チッ。」
舌打ちした暁が玄関のドアを、
………閉めようとした。
「ちょ、ちょっと待った!」
慌てドアの隙間に自分の足を差し入れる。
「っ、痛い!!」
「……。」
「暁、頼むからドアを閉めないでくれ!」
俺の足がっ!!
「…うるせぇ。」
喚く俺をお構いなしに、未だにドアを閉めようする暁。
……えぇ!!?
これって虐めですか?
もしかして、俺って暁にそんなに嫌われてたの!?
――――ショックなんですが!
「……暁?」
俺が軽く白目を向き掛けた時、
……聞こえた天使の声。
「っ、莉茉ちゃん!!」
「…え?大雅さん…?」
ドアに足を挟まれている俺に目を丸くする莉茉ちゃん。
彼女の後ろに、神々しい光が見えた気がした。
「…どうしたんですか?」
首を傾げた莉茉ちゃんがとてとてと、俺達の方へと近付いて来る。