「…………暁も……。」
「ん?」
「叶くんに会う時は、一緒に行ってくれる……?」
ぎゅっと、暁の服の袖を握る。
まだ、1人で叶くんと向き合える自信がない。
「当たり前だ、莉茉。」
ふっと笑って顔を緩ませた暁が私の額に口付けた。
「俺が側にいる。」
「うん。」
「莉茉は何も不安に思う事はねぇよ。」
「うん。」
頑張ってみよう。
……まだ……
胸は痛むけど。
暁が側にいてくれるなら、叶くんと向き合える勇気が持てると思うから。
「……あ……。」
…………忘れてた……
「莉茉?」
「暁、ちょっと待ってて。」
「うん?」
怪訝そうな表情の暁の膝の上から慌てて降りて、急いで鞄の中を漁る。
……あった……
“それ”を手に持って、私は暁の方へと振り返った。
「暁にお願いがあるの。」
「お願い?」
「うん、お願い。」
暁にして欲しいの。
前に進む為の力にしたいから。
「お願い?」
「うん、お願い。」
頷いた莉茉が手に持っていた物を、俺へと差し出した。
「……ピアッサー?」
「そう、暁にピアスの穴を開けて欲しいの。」
じっと俺を見上げる莉茉。
決意に満ちた瞳。
「何で開けたいんだ?」
「暁の言葉が嬉しかったから。」
「言葉?」
どの事を莉茉は言ってんだ?
「覚えてない?アメジストのピアスが証しだって、暁は言ってくれたでしょう?」
「あぁ、言ったな。」
……でも……
それと、莉茉がピアスの穴を開けたい事になるんだよ。
「私もね?証しが欲しいの。」
「証し?」
「うん、暁とずっと一緒にいる事をぶれないように証しを刻みたい。」
……莉茉……
お前、そんな風に思ってたのか?
初めて知る、莉茉の胸の内の本音。
凛とした姿に小さく息を飲んだ。
「…………、ピアスの穴を開けるのは良いけど、怖くねぇのか?」
「怖い?何で?」
「何でって、ピアスの穴を開けるのが痛いかもとか思わないのかよ?」
普通は躊躇うだろ?
痛かったらとかどうしようとか……。
莉茉は平気なのか?
「……暁は痛かった?」
「いや、別に痛くはなかったけと……。」
「なら、大丈夫。」
は?
大丈夫?
「暁が痛くはなかったって言うなら、その言葉を信じる。」
揺るぎない眼差しで、莉茉ごにっこりと微笑んだ。
「っ、お前……。」
どんだけ可愛いんだよ。
「それに痛みには私、強いと思うし。」
「…………?」
「お母さんにぶたれたりするよりは、痛くはないでしょう?」
なぁ、莉茉。
……何で……
「痛みには慣れてるもん。」
そんな事を、
…………笑顔で言うんだよ。