それから志信は、一度も薫の方を見ようとしなかった。

同僚や女子たちとは楽しげに話すのに、薫には一言も話そうとしない。

薫は薫で、黙ってタバコを吸いながらビールを飲んでいた。

事情を知らない女子たちは異様な雰囲気に戸惑いながらも、急に仲の悪くなった二人には、あえて触れないようにしていた。



制限時間が来てビアガーデンを出ると、この後カラオケに行こうかと言う話になった。

「私は遠慮しとく。」

「オレも。」

薫と志信はカラオケには行かず、その場でみんなと別れた。

二人で並んで歩いていても、志信は黙ったままだった。

「志信…?」

薫が声を掛けても、志信は目を合わせようともしないで黙って歩き続ける。