薫がこの上なくキッパリと断っても、敦は動じない。

「なんで?」

「付き合ってる人がいますから。」

(すぐ隣にな!!オレだってまだ一度も言った事ないのに、コイツ…!!)

志信は敦を殴りたい衝動を抑え、イライラしながらタバコの煙を吐き出した。

「えー…結婚の約束とかしてるの?」

「…してないですけど…。」

「じゃあオレにもまだ可能性はあるわけだ。」

(ねぇよ!!薫はオレの薫だからな!!コイツどんだけポジティブなんだ!!)

「可能性はゼロです。皆無です。いい加減、冗談はやめて下さい。」

「え?オレ本気よ?」

(どんだけ軽い本気だよ!!)

我慢も限界に近付いた志信がただならぬ殺気を漂わせ、薫の手をテーブルの下で強く握った。

(薫、オレがいるってハッキリ言えよ!!)