更に険しい顔で薫が答えると、敦が薫の目を見つめ、両手を握りしめた。

「よし、じゃあオレと結婚しよう!!」

「はぁっ?!」

唐突なプロポーズに度肝を抜かれ、薫は思わず大声をあげた。

「昔、約束したよね？薫ちゃんが30になっても独身だったら結婚しようって。」

「してませんよ、そんな約束!!」

敦の手を振り払いながら薫が答えると、敦が少し甘えたような表情で薫の顔を覗き込んだ。

「したじゃん。覚えてないの？あの時オレまだハタチだったから、もう少し大人になったら結婚してくれるかなーって。だから薫ちゃんが30になって独身だったら結婚しようって言ったんだけど。オレももう28よ？大人になったでしょ。」

勝手な敦に呆れ果てて、薫はため息をつきながら首を横に振った。

「まったく記憶にないです。」

「じゃあ…改めて、オレと結婚しない？」

「イヤです。無理です。有り得ません。」