薫の隣では、志信が眉間にシワを寄せて拳を握りしめ、肩を震わせている。

「あー、津村じゃん。オマエ、相変わらずだな…。いつかセクハラで訴えられるぞ?」

石田が志信の様子を気に掛けながら敦をたしなめた。

「この人、石田さんの知り合いですか?」

下を向いたまま、低い声で志信が尋ねた。

「オレの同期。4つ歳下だけどな。」

「へぇ…先輩なんですね…。」

志信が奥歯を噛みしめながら低い声でそう言うと、今にもキレそうな志信を、石田が小声でなだめる。

「落ち着け、笠松…。」

「大丈夫です…落ち着いてますよ…。」

そんな会話が交わされている事も知らず、敦は空いていた薫の隣の席に座った。

「オレさー、8月1日付けで、また本社SSに戻って来たんだ。」

「そうなんですか?出戻りですね。」

「ただの出戻りじゃないよ。サブマネージャーになったの、オレ。出世したでしょ。」

「はぁ…そうですね。」