それから少し経った頃、女子たちはお手洗いに行くと席を立った。

(化粧直しかな…?マメだなぁ…。)


薫が相変わらずジョッキを傾けてビールを飲んでいると、小走りに近付いてきた誰かが、後ろから薫に抱きついた。

「薫ちゃん!!」

「えっ?!」

薫が驚いて振り返る。

志信は突然の事に目を見開いて固まっている。

「久し振りだなぁ!!オレだよ、敦だよ。忘れたなんて言わせねぇぞ?」

薫はその正体がわかると、大きなため息をついて、敦と名乗ったその男の腕を自分の体からほどいた。

「津村さん、やめて下さい。セクハラです。」

「なんだよ、相変わらず素っ気ないな、薫ちゃんは。敦でいいのに。」

「卯月です。その呼び方やめて下さいよ、津村さん。」