みるみるうちにどんどん小さくなっていく車。

路上に広がった淡いピンクのドット柄の傘だけが、

虚しく雨音を響かせていた。

「ックショー!」

大志が大声で嗚咽にも似た声をあげた。

「なんで……。なんで、美園だけが……」

震える大志の声が傘に当たる雨音と混ざり合う。

私だって、大志と同じ気持ちだ。

なんで、美園だけが

自分の気持ちを押し殺さなくちゃいけないんだろう。

生まれた家柄のせい?

それとも、両親のエゴ?

やりきれない思いが私たちの胸の中に膨らんでいく。

しばらくの間の後、ふと雅也がぽつりと呟いた。

「大志、お前……」

大志が唇を噛み締めながら雅也へと視線を向ける。

雅也もまた大志を見つめ、こう続けた。

「美園が、好きなのか。」