新堂さんの視線が

今度は美園から私たちへと向けられる。

ふんわりとした笑顔を見せたかと思うと、

瞬間的に悪魔のような冷たい表情へと一変する。

「お騒がせして申し訳ございません。

 ご挨拶が遅れました。

 私、美園お嬢様の執事の新堂衛(まもる)と申します。

 お嬢様は高校卒業後にご婚約者様とご結婚されるため、

 今はそのご準備を粛々と進めているところなのです。

 美園お嬢様と仲良くして頂き、

 本当にありがとうございます。

 しかし、

 これからはこうした時間も取れないかと思います。

 申し訳ございません。それでは、失礼致します。」

表面上はとても穏やかに、でもトゲのある言葉を残し、

新堂さんは美園を抱きかかえたまま車へと乗り込み、

急発進させた。

私たちはその光景をただ見守ることしかできないでいた。