「そうは参りません。

 私は、ご主人様から

 お嬢様をお任せするよう言われておりますので。」

新堂さんはもう一度、美園へと右手を伸ばす。

美園もまた手を取らせまいと

素早く手をひこうとして身体全体を傾ける。

その瞬間、バランスを崩しよろめいた美園を、

新堂さんは抱きかかえるようにして両腕で受け止めた。

「ちょっと、離して!」

新堂さんの腕の中で

美園が必死に抵抗しようともがくが、

男性の力は思っている以上に強く、

そう簡単には抜けられそうもない。

もがき、ばたつく美園を見つめながら新堂さんが、

「美園お嬢様。

 これはお嬢様の為を思ってのことなのです。」

と、説得するように告げた。