「新堂、さん……」

その男性、新堂(しんどう)さんは、

すっと美園の前で立ち止まる。

と、ほぼ同時に不気味な笑みを浮かべながら

口を開いた。

「美園お嬢様。こんなところにいらしたのですね。

 さぁ、ご自宅へ戻りますよ。

 先生が首を長くしてお待ちになっております。」

そう言うと新堂さんは美園へと右手を伸ばした。

しかし、美園はその手を思い切り叩きはね返す。

「……新堂さん。

 お願いだから、今日だけは私の好きにさせて。」

心の奥にある感情を押さえ込むようにして、

美園が静かに訴える。

しかし、新堂さんは

美園の想いを切り裂くように言葉を続ける。