昨日は不安で不安で

みんなの視線がすごく怖かったのに、

今日はすんなりと校内へと入ることが出来た。

それだけで私は

打ち明ける前の小さな一歩を踏み出したような気がして、

少しだけ嬉しくなった。

「羽衣、おはよ。」

ふと後ろから声を掛けられる。

その方を振り向くと、私の顔が自然と緩む。

「おはよ、雅也。」

私を追いかけてきたのか、

少し小走りに私の横に並んだ。

今さっきまで私の中にあった疑問を、

雅也に投げかけてみようと口を開こうとしたと同時に、

「もう、大丈夫だよな。」

と先に雅也の方が穏やかな口調で私に訊ねた。

私は小さく頷くと、

「大丈夫。

 もう、美園たちに“作った私”なんて見せないよ。」

とこたえると、雅也は安心したのか微かに微笑んだ。