彼?
私彼氏いないし…誰だろ。
「ハハ、その様子じゃ分かってないみたいだね」
珍しく優しかったのに、と先生はおかしそうに笑った。
「――君をここまで運んでくれた子から」
「えっ……」
「お、これでわかるのかい?名前は脅されたから教えてないはずなんだけどなぁ」
いや、確かに名前は知らない。
てか先生、脅されたって…。
けど誰なのかは、真昼に教えてもらった。
脳裏にあの笑みが浮かぶ。
「銀狼…から、ですか?」
「ん、正解」
満足そうに笑った。
…もしや試されてた?
わざと教えなかったのかな…。
でも、今はそんなのどうでもいい。
「あの、伝言って…」
感情を抑えたつもりだったんだけど、バレたみたいだ。
フッて笑った先生の方が、大人だった。
「帰り道には、気を付けろ」