「―――んー、まだ顔色が良くないね」
眼鏡の(相変わらず気が弱そうな)保健室の先生が、困ったように唸る。
「でも先生ぇ~。さっきよりかは良くなってるよね?」
その男の隣で、真昼が楽しそうに言った。
…何でここにいるんだっけ……?
真昼から話は聞いたけど、とにかくきつかったからまだ整理できていない。
ちょっと整理してみよう。
まず、私の正体が(信じたくないけど)バレちゃったってこと。
そのあと私はパニックになって、旧校舎でパタリと倒れた。
打ち身の外傷がないのは、アイツがしっかり受け止めてくれたおかげだ。
『銀狼』。
この学校を支配してる不良グループの名前だけど、そのグループのリーダーもそう呼ばれてるらしいと、真昼が言っていた気がする…。
それに、あの銀髪の綺麗な男がそうだと言っていた。
なぜあの男がリーダーだって分かったのは半分推測、半分は勘だ。
あの朦朧とした意識の中で冷静に思考がまわるほど、人間は良くできていない。
でもあのときの私はちょっと優秀だった。
猫目の美女が、銀髪男のことを『リーダー』って呼んでいたのを思い出したから。
いやぁ~、人間ってホント、よくわかんない。
…本当の名前は知らない。