私達はいつも通り屋上へ向かう。

「そろそろ来るんじゃない。雨、止んだわね」

屋上の扉を開けると、雲の間から青空が覗いている。足元には絨毯のように桜色が敷き詰められている。
何の特徴もないこの街を見渡せるここからの景色は、私のお気に入りだ。

普段もう一人の幼馴染みには迷惑被っているが、屋上の鍵を拝借してきた事はあのバカ史上最高のファインプレーだった。

「あぁ、やっと静かになった」

「雪輝は賑やかなの苦手だもんね。にしても女の子たちの騒ぎようは凄かったな」

「本当煩わしいわ。席、替えてくれないかしら」

二人でお弁当を広げ、私は思わず愚痴をこぼす。

「リンドくん…だっけ。帰国子女だなんて、かっこいよなぁ。オリュンポスってアメリカかな?」

拓也の純粋過ぎるハートに眩暈する。
そんな場所存在しないっつーの。

「オリュンポスだなんて、只のもうそ」

妄想。と言いかけたが、背後に気配を感じ、私は勢いよく振り返った。