先程の春風に運ばれたのか、屋上には僅かに桜色の花びらが舞っている。

まだ、満開じゃなかったのにな。

空、雲、桜。これらのコントラストは、一段と春の訪れを感じさせた。


ただ一つ。一つだけ、不必要な色がある。それを踏まえた上で申したい言葉。それは



「いや、誰だよ」



春を感じるのに、黒は必要ない。
ガイアって誰やねん。
私を見てるよね。確実私に向けて言ったよね。自己紹介の時より、意味不明具合が増してるよ。待って怖い本当に怖いんですけど。こんなキャラじゃないのに、キャラ負けしちゃったよ。

「誰、だと…?何を言っているのだ。俺が分からないのか…?」


声に滲んだ動揺の色は、転入生の心情を明確にさせた。状況が理解出来ないのは私の方だっていうのに。

「いや、本当に怖いんですけど。初対面なのに急に何ですか。頭大丈夫ですか」

「こら雪輝、失礼なこと言わないの。ごめんねリンドくん。でも俺、雪輝と小さい頃から一緒にいるけど、リンドくんのこと見るのは初めてだなぁ」