「なんか、怒ってる?」

「・・・怒ってない」

「怒ってるじゃん。・・・千菜さんとなんかあった?」



“千菜さん”っていうのが、うちのお母さん。
快斗はお母さんの事をそう呼んでる。



「・・・別に」

「ほんと、お前ってわかりやすいのな」



快斗にそう言われ、私は足を止めた。




「お母さんには感謝してる。私を一人でここまで育ててくれて。神社をあそこまで立て直して、巫女の仕事がんばってて・・・」




いつも一生懸命で、笑ってて。
私の自慢のお母さんだ。




「でも、私にはお母さんがわからない」




時々見せる寂しそうな顔とか。
私を見る時の表情とか。
私に、なにを見てるのか。



「この髪だって、私はすごくすごく嫌なのに。お母さんはこれを見ても、こんな私を見ても、大好きだって」




この髪のせいで、小さいころからからかわれて、いやなこともいっぱい言われた。
いやでいやで、髪の毛をむしったことだってある。