「由羅!・・・大好きよ。いってらっしゃい」



背中に投げられた言葉を無視して玄関を勢いよく閉めた。
お母さんは、きっと誰よりも愛情表現をする。


一日に何度も、ああして“大好きよ”って言う。
私はそれが、いやだった。


思春期の反抗期、なのかもしれないけど。





うちの神社の境内を通り、長い階段を下りた先に快斗が待っている。
足早に階段を下りると、すでに快斗は待っていて鳥居の前に背を向けているのが見えた。




「快斗!」

「よお、お。馬子にも衣装だな」

「うっさい」



一言目にからかうような言葉を言われむすっとする。
ズカズカとカイとを通り過ぎ、会場の方向へ進んだ。




「おいおい。褒めたんだって」

「どこがよ」

「可愛いよ、由羅」

「気色悪い!」




虫の居所が悪いんだからね!