｢だって、日高さんちっていろいろ大変でしょう？うちの親ずっとここら辺に住んでたからいろいろ聞いたんだけどね。お父さん、いないらしいじゃない｣
｢・・・片親の奴なんて、他にだっているし。別に特別なことじゃないだろ｣
快斗が私を庇うようにして言ってくれる。
私は俯き、胸を痛める。
｢でも、日高さんのお母さんって、あまり友だちもいなくて、当時付き合ってる人がいるって噂もなかったのに、突然妊娠したとかってあなたを生んだんでしょう？」
｢え・・・｣
｢日高ってもともとの名前で旧姓だし。結婚もせずに生んで、相手は誰なんだって噂になってたってお母さんが言ってたんだから｣
｢・・・・・っ｣
｢相手だって、一度も姿を見たことなくって。どこの誰かもわからない男の子なんてねぇ」
悪意の含んだ瞳で私を見る。
｢おい、いい加減にしろよ！」
｢やだ、本当の事なのに！よくそんな子供、産もうと思ったわよね｣
私は居たたまれなくなって逃げ出した。
走って。
走って。
そんなこと知らない。
私、お母さんは、離婚したんだって思ってた。
話してくれなかったけど、きっとそうなんだろうって。
まさか、結婚すらしてなかったなんて。
そんなの、知らない！
