ムラカミ「もっちゃん、懐中電灯の電池はあるんけ?」
ムラカミはオレの方にちらっと顔を向けた。
オレ「おぅ、5時間目の理科の時間に理科室行ったやろ?準備室に売る程置いてあったからパクっといたぞ」
ムラカミ「へへっ、おっしゃ、電池の心配は無しやな」
これから始まる探険を想像すると、皆ニヤニヤ顔が綻んできた。と、目の前に工事中のプールが見えてきた。校庭の端っこにある古いプールの横に新しく作っているプールだ。古い方のプールは取り壊しにかかっており、古いプールも工事中のプールも鉄製の異様に高いフェンスで囲まれていた。フェンスと言っても鉄板みたいなモノだから中の様子は判らない。扉はあるがもちろん鍵が掛かっていて中には入れないようになっている。しかし、オレらが目指す土管巡りの入り口はこのフェンスの向こう側にあるのだ。
ナオキ「入り口ってこの中なんか?どっから入るねん」
ナオキが呟いた。
まこっちゃん「あれ?ナオキって土管初めてやったっけ」
ナオキ「そやで」
ナオキは首をコクコクさせてオレらの方を見た。
ムラカミ「そやっけか?そういや居りそうで居らんかったかもな」
ナオキ「そやぞ、おまえらの土管の自慢話ばっかり聞かされとったんや」
そう言って、ナオキはポケットからごそごそと紐飴を取り出し、口の中に放り込んで唇からだらんと紐を垂らした。
ムラカミ「ここから入るんやがな」
と、ムラカミはフェンスに付いている鍵付きのドアを指差した。
ナオキ「ここからって、鍵かかっとるやんけ?」
ナオキは怪訝そうな表情で鍵の掛かっているドアをがちゃがちゃやりだした。
ムラカミ「こ、こらこら静かにせんかいっ!誰かに見付かってまうやんけっ!」
ムラカミは辺りを見渡したが幸い校庭に居るのはオレらだけだった。オレはポケットに手を突っ込み、鍵を取り出すと、自慢げにナオキの目の前でチャラチャラ振ってやった。
ナオキ「へっ?それってここの鍵なんか?」
オレ「そや」
ナオキは紐飴を口から落としそうになるのをなんとか堪えた。