「あーもう、この問題が難しすぎるんだよ!!」
「いや、君が馬鹿なだけだと思うけど…。」
幼なじみは呆れ顔で私に言う。
私は数学が大の苦手だ。
だから、テスト前はこうして幼なじみの家に行って教えてもらっている。
「あのね、ここは先に代入せずにこうしてから代入した方が簡単になるでしょ?」
「わっ、本当だ。
ありがとー、さっすが幼なじみ!」
幼なじみは教え方が上手い。
「出来た、出来たよ幼なじみ!!」
「おっ、正解。
頑張ったねー、偉い偉い。」
そして、私の手懐け方も上手い。
いつも幼なじみが私を褒める時は頭を撫でる。
それがしてほしいから、勉強を教えてもらっているといっても過言ではない。
「あっ、そうそう。
今度のテストが平均点より10点以上高かったらご褒美にパフェを奢るよ。」
「じゅ、10点!?」
ニッコリ笑って言う幼なじみの言葉に私は驚きを隠せない。
だって、幼なじみにいつも教えてもらっても平均点ピッタリの私だよ?
「無理だよ!!!」
私は首をブンブンと横に振る。
「じゃあ、パフェはいらないの?」
幼なじみはニヤニヤしながら言う。
絶対に確信犯だ。
そう思いながらも、私の口は素直なので…。
「………………ほしい。」
そう答えてしまう。
「じゃ、頑張らなきゃね。」
そう言って、幼なじみは机の上にあるジュースを飲む。
「でも、パフェじゃなくてちゅーがいい…。」
私は幼なじみに聞こえないように本音を言う。
いつかはそういう関係になりたいと思うけど、今はこのままでいたい。
っていうか、今の関係が壊れるのが怖いから嫌なんだ。
「君がそれでいいなら、ご褒美はちゅーでいいけど?」
「…………………へっ?」
私は一瞬、幼なじみが言っている事がわからなかった。
幼なじみが言った事を理解した時には私の唇は彼に奪われていた。
「………やっぱり、照れるから無し。」
私から唇を離した幼なじみは顔を真っ赤にしながらそう言った。
その日は、勉強をいくらしても身に入らなかった。