「付き合ってもさ、進学とかしちゃうと疎遠になっちゃう気がするんだよね。のりちゃんもいってたけれど、向こうにはいろんな人がいるわけでしょう。イケメンや美人さんが。サークルだって入るしバイトだってするんだから色んな人と出会うわけで。だから、何というんだろ、付き合うっていう関係じゃない方がいいのかもしれないって言ってたのよねぇ。私はリア充だと小突いてやったけれどさ。のろけちゃってーって」

「確かにな」




 今は好きだとしても、その先のことなんてこれっぽっちも見えない。

 夢に向かって、だとかいう大層なものを持っていない自分。自分のことだってさっぱりわからないでもて余すのに、相手のことなんてさらに読めない。


 だから、俺は何も言わなかった。


 真由子が勘違いで河合がのりちゃんとかいう女のことが好きだと思っていても、言ってやらない。勘違いされた河合も可哀想だが、俺だって、可哀想じゃないか。全くもって異性であるのにも関わらず、こうやって女子並みの話を聞いてやる側にばかりいるのだから。

 あいつなんかより、親しいって思いたい。




「お前はどうなんだよ。いるんだろ、そのくらい」

「あれま竜士君。気になります?」

「別に」




 眼鏡を指先で押し上げた真由子はにやついた。やめろ気持ち悪い、と言ったらうるさいよ、と返ってくる。

 告白してこの関係が壊れたらと思う。
 そんな腰抜けなのか俺は。



「いないわけでもないけど。そうだなぁ。美人でも可愛くもないし。ちびだし育ってないしぽっちゃりだしネガティブだしなぁ。そんな人好きだって人なんていないでしょーし。ああでもいいなぁっては思うよ。そういう、沈黙してても気にしないっていう関係。でもそんな親しい人なんていったら、竜士しかいないし」