見ると聖からだ。

『もし起きてるなら少し話さないか?』

 短いメッセージ。
 返信メールをするまでもなく、明美は立ち上がった。 

 となりの部屋へ入ると、窓際にいた聖がこちらを振り向いて手を上げている。布団に入った大きな塊を見ながら起こさないように静かに聖のところまで行く。

「和己、寝たんだ」

「ああ。一緒に起きているより、いつもと同じ、交代で起きているほうがいいってことになってな」

 膝を抱えるようにして、となりに座りながら二人とも小声で会話を交わす。

「こんなに戦いが長引いたの、初めてだったな」

「そうだね。皆たいした怪我もなくてよかった」

 ゾンビたちに、今までなかった焦りのようなものを感じるのは気のせいだろうか。
 総攻撃のつもりで仕掛けてきたのか……。
 その割には、あっさり引き上げていったのが気にかかる。
 しかし今回の戦いで、今までの戦いに感じたことのない、死というものを体で感じた。
 だからこそ明美に、今のうちに聞いておきたいこと、伝えておきたいことが聖にはあった。

「なにかあったのか?」

 和己が寝ている側で、ささやくような会話が続く。

「なにかって?」

 いつになく真剣な口調の聖に対し、明美が首を傾げる。

「俺がいない間に、和己となにかあったのか?」

 山頂の教会を目指している時のことをいっているのだろう。

「べ、別になにもない。もし、あったとしても聖には関係ない」

 雨に濡れた服。借りた大きなシャツ、抱きしめられたぬくもり。それらが思い出されて、少しだけドキドキする。

「俺には話せないことなのか?」

 明美を見る聖の視線は、真実を見極めようとするように鋭い。それから逃げるように視線をそらす。