「うし、とりあえずなんで君がここにいるか教えてあげる」
ヤクザさん(今からそう呼ぶようにする)は向かいのソファに腰をかけた。
対面していると、何やらやばい商談を持ち込まれてるようだった。
さりげなく顔を見ないようにしてこくこくと頷いた。
なんで私がこんなところにいるか、今一番知りたいことだった。
「まあ簡単に言うと……」
ヤクザさんの説明は分かりやすかった。
簡単に整理すると、私は下校中の時にヤクザさんが追いかけていた男ーーなんでそんな状況になったかは不明だけどーーと曲がり角で衝突して気を失い、そしてここに運ばれてきたらしい。
ちなみに私の家から徒歩15分で着く、子供の時に行ったきり訪れていない寂れた商店街にある店なんだとヤクザさんは言っていた。
ていうかここはなんの店なんだろうか?
周りをキョロキョロと見渡しても、ここは書斎なのかタンスばっかり。
もしかしたら本屋さんとかかもしれない。
「古書店じゃねぇぞ。ここは昔の店主が本好きだから自然と部屋が本まみれになっただけ」
「そっ、そうなんですか……」
どうしてこんなに心を読んでくるのだろうか。
ヤクザってみんな読心術が使えるのかも。
いや、さすがにそれはないか。
「ついてきな。下に行くから」
ヤクザさんはすくっと立ち上がって、部屋を出て行く。
一瞬逃げようかなと思ったけど後々が怖いからとりあえず背中を追った。