違う違う。そんな悠長に考えてる場合じゃないでしょ、私ってば。


「まあまあ。それにしても良く寝てたな」


私はふかふかのソファで寝ていたらしく、座りなおしたらぐにゅっと手と尻が沈んだ。


インコが手の甲をしつこく突いてくるから、たまらず私は両手を太ももに挟んで守る。


「えっと、あの、これ誘拐ですかね」


最近物騒になったってよく聞くけど。


私は恐る恐る聞いてみた。


「ぷっ。んなわけないだろ。待ってろ、いまコーヒー淹れるから」


ですよね。まず私の家裕福じゃないし。


私はとりあえずぼうっとして、目の先にいる人を眺めていた。


さっきからずっと後ろ姿だけしか見えないこの人(声からして男性)はコーヒーをひいてたらしくゴリゴリとした音と共に豆のいい香りが心を落ち着かせた。


豆をひき終えてドリップ作業に取り掛かる。


長い間沈黙が続いた。


「そうそう、君の制服びしょびしょだったからいま干してる」


下を向く。


いつの間にか制服から見慣れない青地のシンプルなワンピース姿に変わっていた。




いやちょってまって。


ということは、つまり。


「ああ気にしないで。それあげるから。どうせ古着だし」


そういうことじゃないんです。


私はとりあえず変なことされてないか体をところどころ触って確認した。