「ななな、何でそれを?」

あからさまに動揺するあたしに、小首を傾げて「だって」と瀬尾は口を開く。


「さっき、すっごい顔して俺の方見てたから…」


(や、やってしまった…!!) 


ウソ、とほっぺたを両手で抑えてあたしは顔を赤くした。


「チョコの匂いとか、ダメな人?」


優しすぎるくらいの気遣い。


あたしは、罪悪感を感じまくって顔を俯かせる。

頷くことも、首を横に振ることもせずにじっと固まってしまった。



(ゴメン、瀬尾。)



「嫌い。

だから…あたしの前でチョコなんて食べないで」


冷たく、あたしはそう言い放つとそのまま席を立って廊下へと出た。


瀬尾がどんな顔をしているかは、結局見れなかった。